これは、立派な理念として最初からあったものではありません。33年、現場で人の話を聞き続けた先に、気づいたら、たどり着いていた考え方です。そしていまは、この考え方を軸に、企業の人材育成と組織づくりに伴走しています。
PMRS合同会社 代表中村 好孝
私は、人の話を聞くのが、ただ好きでした。
だから現場では、いつも、いろいろな立場の方の話をひたすら聞いていました。技術者の話も、管理する側の話も、若手の戸惑いも。何かを引き出そうとしてというより、聞くこと自体が自然なことでした。
いま振り返れば、この「ただ聞いていた」時間が、すべての出発点でした。
プロジェクトの中で、ある人が確かに説明したはずのことが、受け取る側にはまったく違う形で届いている。「伝えたつもり」と「伝わっていない」のあいだに、ズレが生まれている——その瞬間が、見えるようになっていったのです。
多くの場合、このズレは、誰にも気づかれないまま進んでいきます。そして、ずっと後になってから、トラブルや遅れという形で表に出てくる。プロジェクトが止まる原因は、技術や能力よりも、こうした見えにくいズレの中にあることが少なくありませんでした。
私がしていたのは、シンプルなことです。説明した人の「意図」のほうを受け取り、相手に伝わる形にして、渡し直していく。それを、一つひとつ続けていきました。
説明する人も、受け取る人も、そのまま。私がしていたのは、二人のあいだに立って、意図が流れていく「通り道」をつくることでした。
人を直接変えようとすると、たいてい、うまくいきません。人は、変えられることに抵抗します。けれど、人と人のあいだにある条件——関係性や、役割や、判断の軸——を整えると、人は誰に言われるでもなく、自分から動き出していく。それを、現場でくり返し見てきました。
人を変えるのではなく、人が動ける「あいだ」を整える。
気づいたら、33年が過ぎていました。
気づいたら、納期遅延のないまま、プロジェクトを進めてこられたことに気づきました。
これは、普通のことだと思っていました。でも、そうではなかったらしいのです。
力んで成し遂げた実績、という感覚はありません。あいだを整えることを続けていたら、結果として、遅れずに進んでいた。構造がきちんと整っていると、頑張りや精神論で帳尻を合わせなくても、ものごとは自然に流れていく。だから本人には、特別なことをした実感がないのです。
当たり前に回っていた。それが、実は当たり前ではなかった——。この気づきの順番こそが、私の考え方が生まれた道筋そのものでした。
あるとき、ふと気づきました。私がしていることは、特定の現場に限った話ではない、と。プロジェクトでも、企業の人材育成でも、地域のコミュニティ運営でも、長く続けている学びの場でも——気づけば、いつも同じことをしていたのです。
誰かを強く正そうとはしない。代わりに、関わる人が動きやすいように、そっと流れをつくる。そして何より、同じ姿勢を、淡々と続ける。ルールを掲げた瞬間に場ができるのではありません。続けることで、関わる人がその空気を少しずつ理解し、やがて場そのものが育っていきます。
場は、つくるものではなく、続けることで、育っていく。
これは、企業の現場でも、まったく同じです。一度の研修で人は変わりません。けれど、判断軸や関わり方を現場に根づかせ、同じ姿勢で伴走し続けると、組織の空気が変わり、人の動きが変わっていく。PMRSが単発の研修で終わらせず、現場への伴走にこだわるのは、この確信があるからです。
これが、33年の現場を経て、私がたどり着いた一つの確信です。そしてこの考え方が、そのままPMRSという会社の背骨になっています。
正しいことを言っても、人は動かない。説得や指導を重ねるほど、抵抗が生まれ、現場は静かに止まっていきます。
関係性・役割・判断軸が整うと、人は自分から動き出す。誰も変えていないのに、現場がひとりでに進み始めます。
考え方は、日々の仕事のしかたに表れます。私が現場で大切にしているのは、次の三つです。
解決策を急ぐ前に、現場で何が起きているかをただ聞きます。違和感や言いにくい本音の中にこそ、止まっている理由が眠っています。
「誰が悪いか」ではなく、「何が動けない理由になっているか」を見立てます。整えるべきは、人ではなく、人と人のあいだの構造です。
研修や支援で終わりにしません。私がいなくなっても、現場が自分たちの力で進み続けられる——そういう構造を残すことを目指します。
正しいことを言っても、人は動かない。それは多くの場合、人の問題ではなく、現場の構造の問題です。PMRSは、その構造を見立て、人材育成・組織づくり・プロジェクト支援を通じて、人が自然に動き出す現場を一緒につくります。まずは、現場で感じている違和感をお聞かせください。